2017年3月5日日曜日

IT契約において、履行すべき「内容」とは? ~ 「仕様書」と「仕様」

契約を締結するにあたっては、
 「履行」までを考える必要がある
と、前回書きました。

何が契約の「履行」となるかは、契約で決まっているはずですが、それが明確になっていないのが、IT契約における一つの特徴ともいえます。

「履行」の内容は、請負契約と準委任契約では異なります。

システム開発の場合、
 請負契約では
 「決められた」システムを完成させる

 準委任契約では
 システムを開発するという行為をする

ということなります。



準委任契約では、「システムが完成したかどうかは問題ではない」ということに注意が必要です。

通常、システム開発契約は(全体として)請負契約で締結されることがほとんどです。
(委託者側として考えれば当然です。)

そうすると、何らかの形で、
 完成させるシステムの内容を「決め」る必要がある

ということになります。

一般的に、システムの内容は、仕様書で決まるとされています。

つまり、
システム開発における「履行」とは、仕様書に記載された内容でシステムを完成させるということになります。


と、ここまで読まれた皆さんからは、
 その仕様書の変更が度々ある
 仕様書の前に、要件定義ができてない
 仕様書は、システムが開発された後にできるものだ

という感想が出てくると思います。

ここで、ひとつ注意していただきたいのは、
 「仕様」と、(一般的に言われる)「仕様書」とは異なるのではないか

という点です。

システム開発は、要件定義(単純には、委託者側の要求)があり、それに基づいて、「組むべきシステムの内容」が決まって、システム開発が進んでいくと思います。
(当たり前のことですが、逆にいうと開発者側が委託者の委託もなく、委託者側との合意もなく、システムを開発することはあり得ない、ということです。)

この、決定された(合意された)「組むべきシステムの内容」が、「仕様」と言っていいと思います。

本来、
 当事者間の合意が成立していれば、契約は成立する

ということになりますので、
 決定された(合意された)「組むべきシステムの内容」は契約内容である

ということになります。

つまり、
決定された(合意された)「組むべきシステムの内容」に対応したシステムが完成されていれば、契約の「履行」となる

ということになります。

改めて注意が必要なのは、
 「決定された(合意された)「組むべきシステムの内容」」と、一般的に言われる「仕様書」は違う

ということです。

もちろん、「決定された(合意された)「組むべきシステムの内容」」を書面にしたものが「仕様書」だ、ということになると思われるかもしれません。

しかし、
 「組むべきシステムの内容」が決定され(合意され)ていないのにシステムを開発するはずはないので、たとえ(一般的に言われる)「仕様書」が開発完了(システム納品)後にできたとしても、合意されている以上その合意に対応したシステムが完成されていれば「履行」となる

ということになります。

ここでさらに重要なことは、
最初の契約(一般的に「基本契約(書)」といわれるもの)でこの合意プロセスや、「組むべきシステムの内容」を決定する(合意する)方法を決めておく

ということです。

このあたりの業務プロセスを明確にし、マネジメントするのが「契約」です。

実際の業務プロセスに合わせて契約内容を考えなければ、それは何の役にも立たない契約であり、結果的に何の役にも立たない「契約書」ができるだけです。

単純に契約書に「仕様書」と書いているだけでは、
 完成したのか、完成していないのかで、受託者・委託者間でトラブルになる

ということは、当然なのかもしれません。


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